大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ラ)906号 決定

一 抗告人は、原決定が原審昭和五〇年(借チ)第三〇〇一号事件につき、主文において判断を示さないのは、申立に対する判断遺脱であると主張している。しかしながら、右第三〇〇一号事件は、抗告人が、賃借権の目的となっている土地上の建物を競売によって取得した上、借地法第九条ノ三第一項の規定により、賃借権の譲渡につき土地の賃貸人である相手方らの承諾に代わる許可を申し立てたものであり、昭和五一年(借チ)第三〇〇六号事件は、右の申立を前提として、右の賃貸人である相手方らが、同法第九条ノ二第三項・第九条ノ三第二項の規定に基き、自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡を受けるべき旨の申立をしたものである。この場合、裁判所としては原則として後者の申立に拘束され、これに副う裁判をしなければならないと解すべきであり、したがって、前者の申立に対する審理・裁判はその必要がなくなるわけであるから、後者の申立を認容する裁判がなされる以上前者の申立が失効することは、法文の解釈上自ら明らかというべきである。原決定末尾のその旨の説示は、この当然の法理を示したものとして十分であり、主文に掲げないからといって、判断遺脱の問題を生じないことはいうまでもない。

二 抗告人はまた、右第三〇〇六号事件において自ら賃借権を譲り受ける旨の申立をした相手方らが、裁判所の定めた譲受の対価を支払わなかったり、遅延したりした場合、抗告人としては売買契約を解除できる筈で、この場合抗告人の申立に係る法第九条ノ三第一項の申立についての裁判がなければ、抗告人は地上建物を収去するほかなく、著しく不利な立場に陥るから、第三〇〇一号事件の申立を失効せしめるべきではない、と論ずるもののようである。

たしかに、法第九条ノ二第三項(第九条ノ三第二項による準用の場合を含む。)の裁判は、賃貸人と賃借人との間で建物の売買及び土地賃借権の譲渡又は転貸を形成するものであるから、その後賃貸人側に対価の支払について義務の不履行があれば、一般の売買契約同様、契約解除が論ぜられて然るべきであろう。この場合、当該事件はすでに終了しているのであるから、更に法第九条ノ二第一項の裁判をする余地はないが、土地賃借人は改めて同条同項の申立をすることにより、従前同様の地位を回復しうるのであって(この場合、賃貸人が再び法第九条ノ二第三項の申立をしても、特段の事情がない限り信義に反するものとして裁判所を拘束する効力を有しないこととなろう。)、賃借権譲渡が不許可のままとなって地上建物を収去するほかない、という抗告人の説くような事態に陥るおそれはないのである。

(杉山 倉田 井田)

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